・歯周病とは |
「歯周病」という「病気」は歯の周りの歯肉や骨(歯槽骨)が細菌によって壊される病気で、歯そのものの病気ではありません。 歯周病になると歯の周囲の歯肉は歯から剥がれ、その部の骨(歯槽骨)は溶けていきます。その結果、歯はその支持を失ってぐらぐらと動くようになり、やがて脱落してしまいます。 |
・歯周組織の構造 |
・歯周病の原因 |
歯周病の主な原因は、プラックと呼ばれる歯の表面に付着している微生物の集団です。プラックは日本語で歯垢と呼びます。この歯垢をそのままにしておくと、やがて歯垢は石灰化し歯石となります。歯石は歯ブラシでは容易に除去できないため、歯科医院にて機械的に除去しなくてはなりません。 |
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歯面にプラックが形成されそれが発育していくと、歯周組織が傷害され歯肉炎や歯周炎が発症します。 | |
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・歯周病は治らない病気か |
歯周病という病気は、成人だけに限っていえば少なく見積もってもゆうに90%以上の方が罹患している病気です。そのため歯周病が進行して抜歯に至る患者さんが後を絶たず、実際にインプラントや義歯(入れ歯)を入れている方が大勢います。 では、「歯周病」という「病気」は治らない病気なのでしょうか。 そうではありません。歯周病は不治の病でもなければ、難病に指定された病気でもありません。歯周病は病原細菌による感染症なのです。ですから、病原菌の対策(治療や予防)を行えば治せる病気なのです。 そしてその対策の中で一番重要で、かつ、基本となるものが「プラックコントロールなのです。(プラック=歯垢) |
・歯周病の治療 |
歯周病の治療は以下の4つに分けられます。 |
@ プラックコントロール A 非外科療法(ペリオドンタル デブライドメント) B 歯周外科療法 C 定期検査と定期処置 |
@ プラックコントロール | |
プラックコントロールと一言でいっても多種多様な治療や処置があります。その中でもっとも重要で、かつ、基本となるのが患者さん自身のブラッシングです。 実はブラッシングには「虫歯対策のブラッシング方法」と「歯周病対策のブラッシング方法」の2種類あります。そのため歯周病に対しては、歯周病に効果的なブラッシングを行わないと意味がありません。 これまで歯科医院でブラッシング指導を受けられた方は大勢いると思いますが、2、3度のブラッシング指導でこの方法を習得することは難しいでしょう。ましてや、歯の模型のみのブラッシング指導では不可能に近いです。 |
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歯周病を改善させるブラッシング方法を習得するにはそれなりの時間と回数がかかりますが、それを根気よく続けることが何より大切であり、そしてそれを実践している歯科医院こそが本当に「歯周病」を治せる歯科医院なのです。 |
A 非外科療法(ペリオドンタル デブライドメント) | |
歯と歯肉の境にある歯肉溝が、歯周病原菌によって病的に深くなったものを「歯周ポケット」と呼びます。 |
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深くなってしまった「歯周ポケット」は、日常使用している歯ブラシだけで管理することは難しいでしょう。そこで、そのような部位に対してペリオドンタル デブライドメントを行います。 ペリオドンタル デブライドメントの主な目的は、深くなってしまった歯周ポケット内にある歯石やプラックの除去です。 しかしこのペリオドンタル デブライドメントにも限界があります。ある程度以上深くなってしまった歯周ポケットに対しては、効果が期待できないこともあります。そのような深い歯周ポケットに対しては、最終段階として外科的な手段が必要になります。 |
B 歯周外科療法 | |
歯周病に対する外科手術の主な目的は、歯ブラシ等では管理できない深い歯周ポケットを除去して、患者さん自身でプラックコントロールを可能にすることです。 歯周外科手術にはいくつか種類があり、ポケットを除去する目的の手術ではフラップ手術という手術法が一番適応する症例が多いです。 |
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その他近年、新しい歯周組織再生療法の応用も報告されるようになってきました。歯周組織再生療法とは、前述したフラップ手術とは異なり骨吸収した部分に薬を塗布し、歯を支えている歯周組織を再生する治療法です。 |
(歯周組織再生療法) |
この歯周組織再生療法にもいくつか手術の種類があります。最近では、世界初の歯周組織再生医薬品であるFGF-2製剤(リグロス)がわが国で製造販売の承認を取得しました。このFGF-2製剤は保険適応である上、優れた歯周組織再生への効果が報告されており、当医院でもこの歯周組織再生療法(リグロス)を実施しております。 | |
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しかしこの歯周組織再生療法は、すべての歯周ポケットに適応するわけではなく、限られた症例にしか対応できないのが現状です。そのため事前に歯周ポケットの状況を詳しく検査し、再生療法が可能か否か判断いたします。 これまで歯周外科に関して説明してきましたが、これは手術をすれば歯周病が治るということではなく、手術をすることによって患者さん自身でもプラックコントロールが可能になるということです。ですから歯周病を完治させるためには、「術後のプラックコントロール」が必要不可欠です。 |
C 定期検査・定期処置 | |
歯周病という病気は、たとえその治療が適切に行われて完全に治癒したとしても、その後再び病状が現れてくることがしばしばあります。そこで、歯周病の治療がすんでそれが治癒した後も、歯周組織の健康状態の検査や効果的なプラックコントロールを継続することがとても大切です。 |
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プラックコントロールは、基本的には、患者さん自身が毎日の生活の中で行うべきものです。しかしそれは、歯科医療従事者の助けをかりて行うものでもあります。なぜなら、そのようなプラックコントロールの一部は患者さん自身で行うことができませんし、また、プラックコントロールが満足にされているかどうかのチェックも、患者さん自身にはできないからです。 ですから、歯周病治療後は、患者さんの口腔清掃のチェックや必要に応じての清掃指導、ペリオドンタル デブライドメント、患者さん自身では除去できない部位のプラック除去、といった処置を、歯科医療従事者が定期的に行う必要があります。 |